塾へのご相談で最も多いテーマの1つは、お子様の「ケアレスミスが多い」(計算ミスなど)という点です。ここでよく生徒さんに聞く質問を取り上げます。
先生:「計算ミスは自分では多いと思う?」
生徒:「多いと思う。」
先生:「じゃあどうすればうまく改善できると思う?」
生徒:「気をつける。」
おおよそ上記のような返答になりますが、そこにさらに加えて質問をします。
先生:「学校へ行く時に、いつも家の前でつまずく場所があるとします。今後つまずかないようにするにはどうしたらいいと思う?」
生徒:「そこを通らないようにする。」
先生:「気をつけるではダメなの?」
生徒:「気をつけるだけでは、危ないかもしれないから。」
このように、実際にイメージできる場面においては、具体的な解決方法を答えられる生徒が多くなります。ところが、計算ミスなど勉強の話になると、曖昧な答えになります。
気をつける=ただ意識する、ことには限界があるということは、子供たちの多くが日常の経験から理解をしています。
ただ勉強では曖昧な対話は、自然に行われています。
親:「ここの計算ミスもったいない、できていたら100点だったのに」
子供:「うっかりしとった」
親:「次は気をつけてな」
子供:「うん、気をつける」
ただこのような会話が、あまり解決に至っていないことを感じることがいくらかあるのではないでしょうか。
勉強においてケアレスミスを避けるには、どのようなポイントが必要なのでしょうか?
その対策は以下の3つになります。
① 間違いを「記録」する
② 記録から、「具体的な問題点」を把握する
③ 「その問題点だけを解決する練習」を集中的に行う
ケアレスミスを減少できない最大の原因、それはずばり「何が本当の問題なのか」、実はよく分かっていない、という点にあります。
たとえば、「計算ミスが多いよね」というのは、誰でも理解できることではありますが、その生徒はいつ/どこで/どのようにミスを重ねているのでしょうか?このように聞かれるとおそらく大半の保護者の方も本人も「よく分からない」と答えると思います。
① 間違いを「記録」する
第1の出発点は、ミスの「記録」です。ふだん問題集でも、ノートでも、◯やバツはつけると思います。しかし、そのミスが具体的にどのようなミスのパターンを持つのかを記述してはいないと思います。多くは、「あ、ここはかけ算だったのにし忘れたわ」というように、頭の中で納得し、見直しを終了します。
単なる「計算ミス」として終わらせず、計算のどこが具体的にミスをしているのかという細かい原因を書いて、と言われると少し難しく感じると思います。
ケアレスミス減少のためには、これの記録をノートに書いていくことがとても重要になります。
② 記録から、「具体的な問題点」を把握する
簡単な例を書きます。生徒は、わり算が苦手だとします。5÷2と言われると、まず2×2=4という処理があり、そのあと5ー4=1という処理があります。ここでは余りにするかどうかはいったん置いておきます、ここで大事なポイントは、わり算において「かけ算」と「引き算」を使ったということにあります。
この生徒は、わり算で、一つ一つこの要因を分解して「記録」していった結果、計算ミスのすべてが「引き算」のミスだったことが記録したことで気づいたとします。
すると、ここでケアレスミスの原因は、「わり算」の苦手によるものではなく、「ひき算」の苦手によるものだったということが判明します。
③ 「その問題点だけを解決する練習」を集中的に行う
上記の具体的な原因に行き着いたとき、
以下の2つの解決策のどちらをとればいいでしょうか?
A わり算をひたすら練習することで、すべてのケアレスミスがなくなるまでがんばる
B ひき算の練習に集中し、まずは引き算における問題を解消してからわり算を練習し直す
ここでの答えは、言うまでもなくBになります。この学習によって、まず生徒の考え方は大きく変わります。
「わり算を間違えないようにがんばる」→「わり算のなかのひき算を気をつけよう」
このような問題点の具体的なキャッチによって、エラーが明確になっていき、どんどん対処されていきます。もちろん練習する場合の時間の効率も良いです。
仮にこの生徒がひき算以外でミスをしていないなら、それだけを解決すれば、計算の正答率は一気に向上することになるはずだからです。
「ケアレスミスを減らす」→「今度は気をつけようね」では解消しないということがイメージしていただけたと思います。気をつけることが悪いのではありません。ただそれだけでは、注意するべき範囲があまりに広いために、結局は肝心なところで見過ごしてしまう、ということになります。
あんなに頑張ったのにケアレスミスをこんなにするなんて、とテストが返却されたショックを受けることもあると思います。ぜひ普段の学校の勉強時から、ノートにしっかり原因を「記録」することからスタートしてください。
自分の気づきは圧倒的に多くなり、学習においてレベルアップするはずです。
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